谷崎潤一郎展

神奈川県立近代文学館の谷崎純一郎展が予想外に良かった。
最初の谷崎作品は自宅の本箱に置いてあった「鍵」、棟方志向のエキゾチックで妖しげな装丁に惹かれて手に取ったのだ。内容ももちろん妖しかった(当時の私は中学生)。その次に読んだ谷崎作品は何だろう、よく覚えていないが、高校時代には「吉野葛」を読んだように思う。「鍵」とは全く異なる作風、怪奇な面相の谷崎とは異なる明るく健康的な紀行文に驚いた。
細雪」を読んだのは時間がたっぷりあった大学時代だったと思う。絵画的な美しさにうっとりさせられた。とくに名古屋辺りでの蛍狩りのシーンが印象深い。
今回の谷崎純一郎展は、写真と自筆の筆跡が時系列的にたっぷりと展示されている。升目を丁寧に埋めた原稿の筆跡と、色紙や手紙ののびのびとした筆跡の対比が面白い。