東京奇談集

この村上春樹作品を文庫本で読み返しているときに、自分自身にも少しばかり不思議なことが降りかかった。
コットンパンツをネットで購入し無事に配達されたのだけれども、その一週間後にまた全く同じ商品が配達されたのだ。二回目の配達の前日に出荷案内のメイルがあり、そのときには「あれっ変だな」とは思ったものの、多分出荷案内のミスで前週に配達されたものがシステム上の何らかのエラーで再送されたのだろうと特に気にしていなかったのだが、その翌日に商品が届いたのだ。さすがにこれは変だと思い(欲しくもない二本目のコットンパンツにクレジットカードでチャージされるのは看過できない)、過去のメイルボックスをチェックしてみたところ受注確認のメイルが一本見つかったので、それを参照して二本の出荷案内メイルの番号をネット業者に連絡した。自分としてはこれで一件落着で、後は不要な二本目のコットンパンツを返送すればお仕舞という気分でいたのだ。
ところが、ネット業者から帰ってきた返事によると、私は間違いなく同じ商品を二度購入手続きをしており、二回ともクレジットカード情報がインプットされているので、システム上のミスは考えられないとのこと。私はキツネにつままれたような気分になり、記憶を辿ってみたがどうしても二度も同じ商品を購入した記憶が無い。私は一人暮らしなので、別の家族が私に成りすまし同じ注文をすることは無い。ネット業者には簡単に事情を説明して、念のためにシステム上のエラーその他の可能性の確認をお願いしたところ、数日後に矢張りエラーでは無く、私が二度注文したとしか考えられないとのことであった。
客観的に考えると、私が二度ネットで注文をし決済も済ませており、その事実を私がしっかり記憶していなかったということになる。何かを思い出せないというという老化に伴う記憶低下では無く、何かをしたことを全く忘れてしまっているというアルツハイマーの症状のようで、ぞっとした気分になる。でも、これ以外にはこれと言って似たような問題は発生していない。そう考えると、手元にある文庫本「東京奇談集」のことが気味悪く思われてきた。まさかね…。